| 米国の企業年金は任意の制度であり、基本的に設立も終了も自由に行うことができる(勿論、ERISAに抵触するような無節操な終了は不可能)。 従って、年金債務を過大に見積もり(低い割引率を使用するなど)、それに対応させる資産を積立てることで、企業年金を主として節税手段として過度に利用する傾向があった。 また、主として80年代の株式市場の上昇により資産額(時価)が年金債務を超過したことで、企業においてプランを終了させて超過資産を取戻す行為が横行した(=アセットリバージョン)。 米国連邦政府は財政赤字削減とも絡んで、(増収を図る一手段として)こうした状況にメスを入れている。 まず、1986年税制改革法では、企業が超過積立資産を取戻すアセットリバージョンに際して10%の特別税が課税されることとなった。 また、債務を必要以上に過大評価して掛金拠出額を水増しした場合の特別税も導入されている。 なお、アセットリバージョン追加対策として、超過資産に課せられる特別税率は88年に15%、90年に20%に引上げられている。
加えて、1987年包括財政均衡法は、資産積立ての上限に新たな要件を設け、積立超過の確定給付型年金への拠出を制限することとしている。 具体的には、それまでは数理上発生債務(我が国の厚生年金基金における責任準備金+過去勤務債務に近い)の100%の積立てに必要な掛金拠出が法人所得税計算において損金算入可能であったのに対して、現在債務という発生給付ベース債務の概念を導入し、この現在債務の150%か従来の数理上債務の100%のどちらか小さい方までの積立てに必要な掛金のみが損金算入対象とされた(図表6参照)。

従来の数理上発生債務を現在債務ベースに引き直した場合、150%を超過する年金プランは数多く存在していた。 特に若年層の多い成熟度の低いプランでその傾向が強かったといわれるが、こうしたところでは損金算入対象となる掛金拠出が不可能となった。実際、87〜90年においては、積立水準の高いプランの拠出水準は低下している(図表7参照)。

以上のような80年代後半に行われた種々の法改正により、確定給付型年金を利用する企業側のメリットが減退し、確定拠出型年金が相対的に選好されるようになったと捉えられる。 80年代後期に終了したプランの数が毎年1万件以上と高水準で推移していることは、そのメリット減退によりプラン提供を取り止めたとところが多かったことを示しているのであろう(図表8参照)。 また、85年から88年の間に終了した1,255プランの加入員170万人のうち、およそ4分の1程度は引続き確定拠出型年金に継承されたとの報告も、そうした事実の証左といえるのではなかろうか。

なお、この他82年のトップ・ヘビールールの導入、86年税制改革による法人税率の低下なども、特に中小企業における確定給付型年金利用のインセンティブを低下させたと指摘できる。 概して、企業にとって税制上の優遇措置の伸縮と年金プラン選択は非常に強い関連性があると断言できよう。
戻る 続き  |