| 一方、IRAの資産残高は高水準での拡大を続けている。 IRAは米国における各種年金の中でも急成長が著しいセクターである。95年の資産残高は11,063億ドルと83年に比べて13倍強の水準にまで増大、年平均伸び率約24%と高水準にある。 年金資産全体の伸び13%程度と比べて如何に高水準かが分かる(表3、図1参照)。 反面、こうした事実は必ずしも本来の退職所得保証手段としてのIRAが順調に成長してきたことを意味するものではない。 これら資産の増大のうち相当部分は、企業のリストラに伴う早期退職、レイオフ等により他の適格年金プランから移管されたもので、これが株式市場等の好パフォーマンスと相俟って資産残高増大に繋がっているためである(他の適格プランから引き出された資金は60日以内であれば無税でIRAに移管することが可能である)。

- 注1)
- キオ・プランは自己運営分、保険勘定を除く(保険勘定分は保険年金に含めた)
- IRAは保険勘定を除く
- 州、地方政府退職年金には、統計上、前米国教職員退職制度(TIAA-CREF)は含まれない
- 当該年金年金基金の資産残高は1995年で1,536億ドルとなっている
- 企業年金、州・地方政府退職年金とも保険契約分は保険年金に含めた
- 旧連邦退職制度には鉄道退職制度、退役軍人制度も含まれる
- 社会保障年金には老齢遺族年金(OASI)のみ
- 株式市場特価総額には、米国が保有する外国株式も含まれている。
- 注2)
- キオ・プラン、保険年金は94年末数値
- 社会保障年金は95年9月末数値
米国における企業年金プランの提供は事業主の任意で決定される。 レイオフ等の場合で転職先に適格企業年金プランが提供されていない場合は以前の年金積立金をIRAに移管することが多い。 具体的には、確定給付プラン提供企業からの転職において、転職先企業で確定拠出企業年金プラン(401(k)プラン等)が提供されていれば当該プランに、提供されていなければ個人年金(IRA等)に資産を移管する傾向があるといわれる。 確定給付プラン→確定拠出企業年金プラン→個人年金の順で従業員の保障程度は低くなる。 IRA資産残高の増大は従業員の所得保障程度の低下と引き換えに成立している面があることには留意が必要である。
元来、IRAは他の適格プランでカバーされていない者、あるいは一定所得水準以下の者に対して退職後の所得保障手段を提供することを目的とする。 しかし、前述のようにIRAへの非課税拠出申告件数及び申告額は86年税制改革の影響を大きく受け、87年以降は大幅に減少している。 所得制限導入による非課税拠出の大幅減少からは、IRAは一定水準以上の者が非課税制度として利用していた様が窺えよう。 実際、「高所得者ほどIRAから利益を受ける傾向がある」と各方面から指摘されてきた。
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