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第4回:「いびつな状態下での安全かつ有利な投資」

2003/01/15
齋藤 健


 前回述べたように「ローリスク・ハイリターン」(安全かつ有利な投資)は本来はありえず、高い投資収益(リターン)をあげるには高い危険(リスク)を受け入れる必要があるのですが、そもそも人間の営みを反映している金融市場が完全に自由な市場であるわけではありません。 そのため政治・経済政策などの理由で安全かつ有利な投資が存在することがあります。 また犯罪行為によるものもあります。 以下に例をあげてみました。

1.政策によるもの
 (1−1)郵便貯金や今回政府が検討している個人向け国債等においては国家が破綻しない限りは、その集めた資金の投資先が返済できるかどうかに関わらず、投資家には元本の返済と通常より高い金利が確約されています。 これは政府が民間の資金を吸い上げる必要があると考える場合におこります。 本来は投資家が提供した資金(預金でも債券でも株でも同じですが)はそれを一括して運用する運用者の優劣により投資収益が決まることが自由市場での姿であり、優秀な運用者に預けた資金は高い収益を生み運用者が失敗すれば収益どころか元本の返済も危うくなります。 しかしこれらの投資の場合は国が借り替えや税金を投入することを自由に行なえることを前提にしており、その事による甘えが運用側に出てきたときには最終的には国民の税負担増等で付けは投資家に回ってきます。

 (1−2)ペイオフ導入前の数年にみられた「つぶれそうな銀行が提示する高金利な定期預金」というのもこれに近いケースです。 本来、銀行に預金をするということは、その預金の一括運用者である銀行が倒産すれば元本も帰ってこないのがあたりまえです。 これまでは政府および当局が銀行倒産が起こった場合でもその預金は全額預金者に返済することにしていたものを今後は預金保険機構からの一人当たり1000万円までしか保護しませんということにしたわけです。 これにより何が起こったかというと1000万円以上のお金は単に金利が高いところに行くのではなく、倒産確立の低い相手に流れたわけです。 つまりどんなに信用力の低い相手(銀行)に預けてもそのリターンが確定していた時は金利だけを見ていれば良かったのですからペイオフ導入前は「つぶれそうな銀行が提示していた定期預金」などは安全かつ非常に有利な投資であったわけです。

2.犯罪に関わるもの
 インサイダー情報(一部の人間しか知りえない情報)を利用して投資を行うことがこれの最たるものです。 例えば上場企業の内部者が非常に有望な新製品のニュースを発表する前に株を購入するとか、会社が倒産しかかっていることを事前に知り、株を空売りするとかいうものです。

3.経済情勢によるもの
 「バブルの時の株式投資、不動産投資、ゴルフ会員権投資等」はこれにあたるでしょう。 バブルをささえた要因は、[1]政治家も官僚も経営者も国民も多くの人がNTT株式の売り出しを発端にした成功体験から「投資はこんなに簡単だ」と考えてしまった事、[2]値段が上がるのは売る人より買う人が多いからだという事をはっきり認識できていなかった事、[3]金融機関(当然政治家、官僚、日銀、民間を含みます)が投資資金として無尽蔵に貸し出しを継続した事です。 歴史と常識からはどこかで反転することははっきりしていたのですが、それまでの間は「安全かつ超有利な投資」が存在していたわけです。 数年前におこったIT関連のミニバブルも短期間ではありますがまったく同様です。

 もうひとつの例は「世界の中央銀行の動きや政治情勢などから判断して、ある国の通貨を売って別のある国の通貨を買うと必ず儲かります」というような情報をもとに投資をするケースです。 この場合はうまく行きそうですが、実際は少し違います。 次回はその説明として「競馬予想屋の法則」と「他人の意見鵜呑みの法則」についてです。

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